新人間革命 第11巻 躍進の章336㌻から抜粋
「(伸一は、当時の公明党委員長の関久男に語った)関さん、戦いはこれからですよ。昔は、政権を取るためには戦争をして多くの血を流した。時代は変わっても、皆、政権を取るために、食うか食われるかの、必死の戦いをしている。公明党が、この先、伸びれば伸びるほど、さまざまな勢力が、あらゆる手段を駆使して、叩きつぶそうとするはずです。それが、現実社会の厳しさです。
皆さんは、何ものをも恐れぬ勇気をもち、そして、どこまでも “清潔” であり続けてください。それが国民の期待でもあります。これからは、公明党の議員への懐柔策(かいじゅうさく)もあるでしょう。少しでも私腹を肥やそうなどという野心があれば、全部、利用されます。学会や党を私利私欲のために利用しようという魂胆のある者は、やがて、必ず堕ちていくでしょう。もしも、一生懸命に応援してくれる学会員を、また、社会の信頼を裏切るような、堕落した議員がいたなら、即刻、党から叩き出すべきです」
伸一は、一人ひとりに、射貫(いぬ)くような視線を注ぎながら、言葉をついだ。
「また、絶対に忘れてはならないことは、民衆の幸福のために、権力の魔性と戦い続ける精神です。これから先、党として、ある場合には革新政党と手を結ぶこともあろうし、保守政党と協力することもあるかもしれない。野党の立場で与党を正すこともあれば、政権に加わって、改革を推進することもあるかもしれない。あるいは、政策を実現するためには、妥協が必要な場合もあるでしょう。
さまざまな選択はあるが、根本は国民の幸福のためであるということを、絶対に忘れてはならない。さらに、政権に参画したとしても、徹して権力の魔性とは戦い抜くことです。そうでなければ、公明党の存在意義はなくなってしまう」
その夜、伸一は帰宅すると、当選した二十五人の議員の成長と、党の大発展を願い、深い祈りを捧げた。彼は、これで、公明党の創立者としての責任を、ようやく果たすことができたと思った。衆議院への進出という基盤ができれば、あとは党として独自に活動を進めていけばよい。いよいよ、本当の意味で、党が独り立ちしていく時が来たのだ。伸一は、21世紀に思いを馳せた。
“20世紀は戦争につぐ戦争の世紀である。このまま進めば、21世紀はどうなるのか。果てしない核軍拡競争、第三次世界大戦の恐怖。環境破壊・汚染、食糧問題、民族等々の差別、暴力、虐待、貧困、飢餓、精神の荒廃……。しかし、21世紀を、断じて「滅亡の世紀」にしてはならない。絶対に、「希望の世紀」に、「平和の世紀」に、人間の尊厳を守り抜く「生命の世紀」にしなくてはならない“
伸一が、公明党のビジョンを発表したのも、そのためであった。公明党の掲げる中道政治、すなわち人間主義の政治が、日本の潮(うしお)となり、世界の政治哲学の潮流となるかどうかに、21世紀はかかっていると、伸一は考えていた。だからこそ、これまで、公明政治連盟を、そして、公明党を、命がけで育て上げてきたのである。真剣に唱題する伸一の胸には、21世紀の大空に轟く躍進の足音が、民衆の歓喜の勝鬨が、潮騒のようにこだましていた。

公明党の創立者・池田大作先生
【ひと言感想】
日本の内戦による死者数は、どれくらいに上るのだろうか。天下分け目の戦いと言われる「関ケ原の戦」に限ってみても、東西両陣営に合計20万人の兵員が動員され、死者数は5,000人とも、最大で32,000人を超えるとも言われている。応仁の乱、桶狭間の戦、長篠の戦、戊辰戦争、西南戦争……、数多くの戦乱を合計すれば、幾十万、幾百万人にも上るだろう。負傷者数を含めれば、さらに膨大な数になるであろう。それらの内戦も言ってみれば、「政治の主導権争い」としての戦であり、多大の犠牲者を出し血が流されたのである。
ひるがえって近・現代においては、先人たちの努力によって、内戦という手段に代わって、「選挙」という平和的な手段によって、時の政権を選ぶ仕組みに大きく様変わりしている。そのような歴史的な変遷を知ってか知らずか、現在では、(政治不信を与える政治の側にも大きな問題があるのだが)「どこに投票しても同じさ」との冷笑にも似た態度で投票を棄権したり、実際に何ら政治家として仕事をしていないにも関わらず、耳障りのよい言説に乗せられて投票行動に走る人々が少なくない。
その前提の上で、池田先生は公明党の存在意義を上の書籍では、「清潔であること」「目的は民衆の幸福のため」「権力の魔性と戦う党」という3点を挙げている。右派や左派にも、特定のイデオロギーにも偏(かたよ)らない。どこまでも生命の尊厳と平和を護り抜く、「中道主義」の政治が、日本のみならず世界の潮流になっていけるかどうかに、21世紀はかかっていると仰せです。
果てしない核軍拡競争、第三次世界大戦の恐怖、地球温暖化、環境汚染、食糧問題、民族等々の差別、暴力、虐待、貧困、飢餓、精神の荒廃……。政治の次元においては、これらの問題群を解決し、21世紀を「滅亡の世紀」から「希望の世紀」に転換しゆく鍵が、公明党が推進する中道政治なのです。


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