南北分断の歴史

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写真はつい先日ネット通販で購入した書籍です。書名は『朝鮮戦争(上) ~血流の山河』です。現在、米朝関係は緊張度が最高度に高まっていますが、その昔に、そもそもなぜ北と南に分断されなければならなかったのか。それを知れば知るほど、大国の都合に翻弄された南北朝鮮の民衆の悲劇が、胸に訴えてきます。未だ同書は手を付けたばかりで、南北分断の歴史を深く知った訳ではありません。その上で、分断の歴史を振り返ってみたいと思います。

 

史実に基づく物語は、第二次世界大戦における日本の無条件降伏にまでさかのぼります。それまで日本の統治を受けていた朝鮮は、日本の降伏により自由を得るのですが、次に待ち受けていたのは終戦後の東西冷戦でした。核兵器開発競争にしのぎを削る冷戦構造に、朝鮮が巻き込まれることになり、核兵器の性質上お互いに直接手を出せない大国の狭間【はざま】で、世界最大の代理戦争が勃発することになるのです。

当初、北緯38度線を境にして、アメリカを中心とした資本主義陣営が南半分を、ソ連・中国を中心とする共産主義陣営が北半分を、分割して占領しました。朝鮮が大国によるこの分割統治を許した背景には、朝鮮の政治指導者たちが、東西二陣営のどちらに接近するかにより、二分され1つに結束できなかったことから始まっています。大陸と地続きであるという地理的条件も、朝鮮が日本とは大きく違う戦後史を歩むことになった大きな原因がありました。

こうして南北分割統治が始まりましたが、軍事力においては当時は圧倒的に北朝鮮が優位でした。なぜならば、1つはソ連から大量の兵器が供給されたこと。その最たるものは最新鋭のソ連製戦車が多数配備されたことです。対して南の韓国には、はるかに能力の劣る大砲があるのみで、数としても北に比べ少ないということに明らかですが、総力としても圧倒的に南が不利でした。日本が統治していた時に、北は工業中心、南は農業中心という政策でしたので、電力一つとってみても北からの送電を止められた後、南は電気にさえ窮することになったのです。

軍事バランスにおいて明らかに北が優位という状況において、金日成(キムイルソン=金正恩の祖父)率いる北朝鮮軍は、38度線を越えて南への侵攻を開始したのです。一時、南の韓国軍は韓半島の南端・釜山【プサン】まで追い詰められますが、アメリカ軍を中心とする援軍を得て形勢は逆転、北端まで攻め上ります。北朝鮮も中国軍の援軍を得て再度、南へと押し戻します。こうして3回(5回とも)にわたって韓半島を両軍が戦闘を繰り広げながら縦断を繰り返したのです。

当時の最新鋭の兵器が、東西両大国からこれでもかと南北それぞれへ大量投入され、その縦断の度に国土は焦土と化すことが繰り返されました。その度に民衆は逃げまどい、家を追われ殺され、生き残った人々も難民となります。3年間に及んだ朝鮮戦争の犠牲者の数は、南北朝鮮合わせて400万人、総人口の20%にあたるそうです。それは国民の5人に1人が戦死したことになり、第二次世界大戦の日本の犠牲者300万人(総人口の4%)に比較しても、朝鮮戦争がいかに凄まじい戦闘だったかがわかるのです。一方、軍人は韓国軍は約20万人、アメリカ軍は約14万人、国連軍全体では36万人の死傷者を出し、北朝鮮軍および中華人民共和国の義勇軍も数十万人単位で多くの戦死者を出したのです。ウィキペディアにはその苛烈さについて、次の記述もあります。

この戦争でアメリカ空軍は80万回以上、海軍航空隊は25万回以上の爆撃を行った。その85パーセントは民間施設を目標とした。56万4436トンの爆弾と3万2357トンのナパーム弾が投下され、爆弾の総重量は60万トン以上にのぼり、第二次世界大戦で日本に投下された16万トンの3.7倍である。

いかに数字を列挙しても、その悲惨さと民衆の塗炭の苦しみの一端をも表すことは不可能です。この悲惨を尻目に、朝鮮戦争により米軍から大量の物資やサービスの発注を受けた日本は、「朝鮮特需」と呼ばれた好景気を享受することになったのです。3年間にわたり徹底的に最新兵器を投入し国土を焦土にし、数百万人の犠牲者を出した戦争の結末は、38度線で停戦というものでした。戦争の前と後で何ら状況が変わらない結果を得るために、これほどの犠牲を払ったこの戦争の意義とは、「戦争ほど不毛なものはない。唯一得られるものは、徹底した破壊のみである」ということでした。戦争により喜ぶのは「魔王」であり、武器の商いにより巨利を得る「死の商人」だけなのです。

確かに戦争を最初に仕掛けたのは北朝鮮でしたが、その背景にあった大国の論理に翻弄された韓半島、という構図を見過ごすことはできないのです。

→参考ページ1

→参考ページ2

 

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