Menu List of
          さぶろく


ホーム

育自日誌

読書感想(書庫)

作者自己紹介

将棋の部屋

ベートーヴェンの部屋

ビクトリー・ロード

掲示板

更新メモ


★当サイトへのリンクは、基本的にフリーですが、その旨ご連絡頂ければ幸いです。
リンク用バナー

Copyright (C)
 Since 1998  Saburoku




読後のちょっとした感想(書庫)

2007年(H.19年)

平成20年6月21日更新

注意: 星印の評価はあくまで私の主観と好みによるものですので、当然ながら誰が読んでも当てはまる事を保証するものではありません。


●『法学入門 [第5版補訂版]』 末川博編/有斐閣双書1月10日読了
☆☆☆☆ 良い


●『売上を100倍にする やさしい SEO入門』/杉山剛太著/中経出版
(1月12日読了)
☆☆☆ ふつう


●『関ヶ原 上巻』/司馬遼太郎著/新潮文庫(1月18日読了)
☆☆☆☆ 良い


●『嫉妬する人、される人』/谷沢永一著/幻冬舎(1月26日読了)
☆☆☆☆ 良い

 以下は、読んでいて印象に残った所。

 (中略)
 私は政治の極意とは、やることをやって、跡を消すことだと思っています。それが、嫉妬の対象にも、憎しみの対象にもならない唯一の方法です。足跡がベタベタと残っているようでは、いけません。

 (中略)
 世の中には「理性」とか「知性」とか「悟性」といった美しい言葉がありますが、そんなものは頭で作り上げた観念に過ぎません。つまり全部その下に感情があって、その感情を抑制したり整理したりしたものが、あるときには「理性」となって現れ、あるときには「知性」になって出てくるのです。
 要するに、「知性」「悟性」「理性」とは、謳【うた】い文句、看板、外向けであって、その中身はじつはドロドロした嫉妬ではないかと思います。
 では、嫉妬とはいったい善か悪か、プラスかマイナスかということが根本問題になりますが、私は人間を人間たらしめている大きな原動力であると考えています。
 つまり、人間生活上のモーターであり、エンジンであります。
 ということは、嫉妬するという気持ちがない人は、人間関係に対する関心がないということです。人間関係に対する関心がなければ社会生活がないわけで、社会生活がなければ経済発展はない。したがって近代化は不可能ということになります。
 どこの国とは言いませんが、某国ではみんな嫉妬もせずに、清く美しく、あるいは個々バラバラの砂粒で生きている。だから、百年経っても近代化しないということになります。
 人間が持っているもっとも暗い衝動、「他人に負けたくない」とか「憎たらしい」「悔しい」といった感情があるからこそ、文明は発達するのです。

 (中略)
 ころは元禄、京都の堀川に、伊藤仁斎という町住みの学者がいた。細川候が禄千石を以【もっ】て招いたが応じない。彼の私塾には、全国から前後三千人の門弟が集【つど】った。町人が武士を教えたのである。主著と見做される『童子問【どうじもん】』の一節に、仁斎はこう記した。

 富貴爵禄は、皆人事【じんじ】の無【なく】んばあるべからざる所の者、只当【ただまさ】に礼儀を弁ずべし。豈徒【あにいたづら】に以って外物と為【し】て之を厭うべけんや。

 貧富褒章の差をことごとく無くしてしまえ、というのは間違いである。位階勲等を廃せよというのは誤りである。叙勲や授賞は無意味であるというのも感情論である。
 人間の社会に平等と公平はありえない。なにほどかの理由によって富を蓄えたり地位を得たり賞にあずかったりする社会の仕組みは、それは人間の世の中が無理なく運行してゆくのになくてはならぬ約束事である。ただし、それを享【う】ける者は、道義にもとづいて進退しなければならない。

 以上が一応の口語訳であるが、あるいはなんだか権威主義のように思われるかもしれない。ごもっともである。実は、仁斎の本当に言いたいのは次のようなことなのである。

 厳【げん】に此【こ】の意【い】を洗滌【せんでう】せずんば、後来必ず人事を厭【いと】い、枯寂【こじゃく】を楽しみ、日用に遠ざかって、人倫【じんりん】を廃するに至らん。

 富貴爵禄は人間の内部の精神に関係がないと見て、人格をおおう皮膚の外側に漂う物質のような他所者【よそもの】であると排斥する考え方を、反省して改めなければ、のちのち次第に人の世は汚らわしいと顔をそむけ、人間世界を離れた世の塵のない宙空に浮かぶような脱俗の心境を楽しみ、日常生活に処する気働きから遠ざかり、やがては人間関係から離脱するに終わるであろう。

 これが仁斎のいちばん言いたい核心である。
 仁斎の根本思想はこうである。

 人の外に道無く、道の外に人無し。

 人間が生きるのは人の中においてである。人から離れ、人の世から逃れたら、そこに人の生【せい】はない。
 (中略)
 仁斎はなぜ自分が俗物と受けとられかねないような辞句を記したのか。つまり仁斎はすこし先くぐりしたのである。富貴爵禄はうんぬんの立言【りつげん】は、現に富貴爵禄を得ている人々には必要ない。
 この辞句は、富貴爵禄を得ていない人々に宛てられている。その人々の気持ちを少しでも引き立てようとの意図に発する。健康体に薬を盛る医者はいない。仁斎は弱き人、思い屈した人の心の患い、病、傷【いた】みを癒すべく、心をこめて精神の安定剤を処方したのであろう。

 (中略)
 嫉妬は人間の本性である。これをいちがいに否定すべしと見たラ・ロシュフーコーは間違っている。嫉妬は万有引力のようなものであると言った松下幸之助がもっとも卓越している。万有引力に呪【まじない】をかけて消滅しうるか。すなわち嫉妬もまた人間の本性の一つと考えるべきである。松下幸之助は語をくわえていわく、嫉妬を黒焦げにするな。きつね色に焼け。達人の言葉である。
 (中略)
 嫉妬は日本国の存立の基盤である。日本人が昔も今も嫉妬の情を燃やしつづけたればこそ、日本は部族社会の段階にととまらず、今日の盛況を見るに至ったのである。
 嫉妬は地の塩である。嫉妬はエンジンである。嫉妬は浮揚力である。嫉妬は人間を鍛える砥石【といし】である。性欲と同じように嫉妬は、人間世界に栄えありという天の意である。


●『簡単に、単純に考える』/羽生善治著/PHP文庫(2月18日読了)
☆☆☆ ふつう


●『上手な話し方 が面白いほど身につく本』/櫻井弘著/中経出版(3月7日読了)
☆☆☆☆ 良い


●『こうなったら無敵の営業マンになってやる!』/ブライアン・トレーシー著/門田美鈴訳/ダイヤモンド社
(3月14日読了)
☆☆☆ ふつう


●『パフォーマンス学 入門』/佐藤綾子著/中経出版(3月17日読了)
☆☆☆☆ 良い



●『食事で治す心の病』/大沢博著/第三文明社(3月23日読了)
☆☆☆☆ 良い

 精神疾患の原因には低血糖があるのではないかとし、元々高血糖の人もそれを抑えるためインスリンが過剰分泌して血糖値を低下させるので、低血糖に陥っているケースが多いとのこと。
 精神疾患やキレルなどの粗暴な振る舞いは、脳が栄養不足に陥っている証しなのだそうだ。
 筆者は、菓子類や清涼飲料に含まれる二糖類である砂糖を断つことを強調する。そして統合失調症を取り上げ、有効な手立てとしてビタミンB3(ナイアシン)の補給を勧めている。
 ビタミンの摂取だけで精神疾患が治癒するとの学説は、アメリカの伝統的な精神医学界には受け入れられず、製薬業界の反発もあって、日本でも主治医に伝えても了解が得られないことが多いようである。
 ビタミンB3は日本では入手は困難なようで、輸入商品をインターネットから購入するしかないようである。紅張の副作用が無いフラッシュ・フリー・タイプのナイアシンもあるようである。


●『統合失調症 〜正しい理解と治療法』/伊藤順一郎監修/講談社(4月1日読了)
☆☆☆☆ 良い

 図解が多く読みやすく、Amazonでも評価が高い、統合失調症の本。
 ほとんど読むのが苦にならず、統合失調症について一通り理解できるので、当事者や家族の方には必携の本だと思う。


●『楽観主義は自分を変える 〜長所を伸ばす心理学』/鈎治雄著/第三文明社(4月11日読了)
☆☆☆☆ 良い


●『「学習塾」の始め方・儲け方』/一之瀬学著/ぱる出版(5月1日読了)
☆☆☆☆ 良い
 各節が文章のあと図解という構成になっていて、たいへん読みやすい。
 教材についても多くのページが割かれているし、教師の予習・準備の大切さや、教室や身なりを清潔に、など、言われてみれば当たり前なのだが、「生徒が少ない」と嘆いている塾ほど、その当たり前ができていない、と強調している。
 「儲け方」については、この基本の強調が多く、真新しいことは少ないように思うが、これから塾を開いてみたいと考えている人への入門書としては、格好の本となろう。


●『上手なほめ方 が面白いほど身につく本』/見山敏著/中経出版(5月7日読了)
☆☆☆ ふつう
 右ページが解説、左ページが図解の構成になっている。
 このシリーズは読み易さが大きな売りなのだが、漫然と読むと読後ほとんど記憶に残らないという難点があるかもしれない。
 全体にストーリー性を持たせて、本当に重要なことを劇的に覚えさせるという、インパクトの与え方を計算した作りもあっていいんでは、と思う。
 ほめ方については、よくまとめていると思う。
 おだてることとほめることは違う、という節が特に印象に残った。
 「豚もおだてりゃ木に登る」ということわざがある(良いたとえではない)が、単におだてることはおだてる側に打算が働いており、相手を自分の思いのままに動かそうとしている。
 それに対して、ほめるのは「相手の成長を願って行なう行為」である。
 つまり、おだてることは「自分中心」であり、ほめることは「相手中心」なのである。おだてるのは、相手の気分が良くなる言葉を並べ立てているだけであり、目的は自分のためである。それに対してほめるのは、純粋に相手の美点を見つけて表現することであり、目的は相手のためである。
 打算でほめても(=おだてても)、相手は簡単に見破ってしまう。口先だけのほめ言葉なら相手は嫌な感じを持つだけである。
 さらに「ほめる」という行為は、よくよく注意して行なわないと、相手に「支配されている」という感じを与えて、不要な摩擦を生じることもある。
 人をほめるという行為には、「ほめる側」と「ほめられる側」の二つの立場があり、ほめる側の方が立場は上なのだ、という認識が暗黙の中に存在する場合が多い。あるいは、ほめられる側からすれば、相手はほめることによって、自分をコントロールしその人の支配下に置こうとしているのではないか、と被害的に受取る場合もある。
 これらを防ぐためには、日常から「私はあなたに好意を持ってますよ」という、心理学で言うストロークの積み重ねが欠かせないのでは、と思う。


●『学習と教育の心理学』/市川伸一著/岩波書店(5月10日読了)
☆☆☆ ふつう
 大学・教育学部で使われる、教育心理学のテキストのようなつくりの本だった。教育現場で直面する実例なども挙げており、その実例に照らして学術用語を解説するのは分かり易かった。しかし概説的な構成であるため、一つの事柄を掘り下げて理解するには、少しもの足りない感がある。


●『棋を楽しみて老いるを知らず』/二上達也著/東京新聞出版局(5月20日読了)
☆☆☆☆ 良い
 二上達也氏は’89年から14年間、日本将棋連盟の会長を務めた。羽生善治は二上氏の弟子の一人である。
 私が将棋を初めて覚えたのは、二上氏が書いた将棋入門書を小学生時代に読んだのが始めだった。さらに、平成13年に合格した初段免状も、連盟の会長として二上氏が署名している。加えて、私が好きなプロ棋士の羽生善治氏の師匠が二上氏ということで、何重にも縁が深い方だと(かってに)思っている。
 本書は、将棋界に身を捧げてきた二上氏が半生を振り返って、棋界の歴史や内部事情を吐露している。全編、淡々とした語り口なのだが、勝負師の熱い魂を垣間見た気がした。
 以下は、特に印象に残った部分である。

 (中略)
 私は、弟子と指す将棋を三回までと決めている。一番目は入門時、二番目は初段になったあたりで、三番目は破門の時である。最後の将棋は「この道をあきらめよ」という餞別【せんべつ】のようなものだ。
 いったん弟子にすれば、強くなってほしいとは思う。だが、才能がなければ、どこかで見極めをつけないと、人生そのものを棒に振る。本当は師匠の方から「見込みがないから、他の職業に進んだ方がよい」と言ってやるべきなのだが、いざとなると口にしづらい。
 ある弟子に、どうしても破門と言えなくて、「おい、一局指してやろう」と座らせた。盤を見ながら、「なんで指してやっているか分かるか」と問うと、「はい」とうなずいた。こちらも辛いが、当人はもっと辛かっただろう。そんな子が将棋以外の人生をきちんと歩み始めると、師匠としては本当に安堵【あんど】する。

 (中略)
 弟子にしたからといって、羽生には将棋は一切教えていない。ただ、はっきりとは言わなかったが、本人は中学を出たら、高校に進学したくないという気持ちが強かったようだ。
 私は「高校ぐらいは出ておいた方がいい」と忠告した。人生は将棋がすべてではない。とかく将棋指しは視野が狭くなりがちで、そのため世間に疎くなる。せめて学生時代にいろいろな人と付き合っておけば、社会に出た時に、広く世の中のことを考えられる。
 「できれば、本をたくさん読みなさい」とも伝えた。師匠として羽生に教えたのは、その二つぐらいである。

 (中略)
 才能があり、利口な男だけに、芹沢は世の中の先を考えることができた。ただ、考えすぎて、人生が分かったつもりになってしまい、足が地から浮き上がった。本当は、先が読めないから人生は面白いのだが、不幸にも彼はそれに気づかなかった。
 (中略)タレントのようにうまく立ち回る芹沢の姿は、私の目には、どこか中途半端に映った。当人に本物のタレントになる気などなく、むしろ、だれよりも、将棋指しでありたいと願っていたはずだ。酒におぼれたのは、そんな心のすき間を埋め、気を紛らわすためだった。やがて、飲み屋のツケが、稼ぎを上回るほどになった。

 (中略)
 現代の若手は、棋譜をコンピューターに入れて研究するようだ。膨大な対戦記録が短時間でデータ化され、棋士の間を飛び交う。情報は携帯電話でも取り寄せられるし、だれかが新手を指すと、すぐに分析されて最善の応手が発見される。
 そうなると、大切なのは記憶力ということになる。戦法への対処法を知っているかどうかが決め手であって、もはやデータベース同士の対決、コピー将棋と呼んでもおかしくない。
 私は、過去に指された戦型や戦法を学ぶだけでは、強くならないと思っている。勉強はすべきだろうが、それだけでは伸びていかない。データとコンピューターの分析通りに戦っていても、自分の性に合っていなければ間違える。妙手が出るのは、得意の戦型で戦っている時であって、所詮、借り物では間に合わない。
 羽生やもっと若い渡辺明は、コンピューターで入手した情報にあまり頼らないと聞く。自分の手で棋譜を並べ直し、独自に解明していくらしい。おそらく、どんな研究や分析よりも自分の力の方が頼りになるという確信があるからだろう。彼らの将棋の作り方を見ると、やはり一つの世界を形成しているように感じる。

 (中略)
 名人戦の契約問題が論議されていたころ、私は連盟を確固たる「将棋の本山」にしなければと懸命だった。そんな中、「将棋連盟がなくなっても、将棋はなくならない」と語っていたのが升田幸三さんである。一理あるとは思った。将棋の文化としての存在感が大事なのであって、目先の利益にとらわれるなと、升田さんは言いたかったに違いない。
 しかし、理事や会長として運営に携わる以上、財務体質は常に気がかりだった。
 (中略)会長時代、私は、棋戦の賞金の一部を連盟で預かり、積み立てる案を出した。ある程度の額を内部で留保しておけば、全体の福祉に使えると考えたのだが、猛反対を受けて通らなかった。積み立てという発想と、勝負師たちの刹那【せつな】的な生き方とは、どうもかみ合わないようなのだ。
 将棋指しの皮を一枚ずつむいていくと、最後は「自我」だけが残る。盤と駒だけ見て生きていければ幸せで、他人に煩わされることを嫌う。
 私自身、そのことはよく承知していた。だから、あまり強く主張しすぎず、役員同士や部下たちの話し合いを大切にした。やや消極的なトップでも、みながバラバラになるよりはいい。悩みながらも、そう思っていた。


●『羽生の法則 Volume3 王桂香の手筋』/羽生善治著/日本将棋連盟(5月28日読了)
☆☆☆☆ 良い

●『モンテ・クリスト伯 (二)』(2回目)/アレクサンドル・デュマ著/山内義雄訳/岩波文庫(6月2日読了)
☆☆☆ ふつう



●『希望の明日へ ―――池田名誉会長スピーチ珠玉集』/池田大作著/聖教新聞社(6月4日読了)
☆☆☆☆☆ 大変良い


●『学び方がわかる本』/L・ロン ハバード原作/ニュー・エラ・ジャパン(6月7日読了)
☆☆☆ ふつう


●『現代日本の地方自治』/阿部齊著/放送大学教材(6月29日読了)
☆☆☆☆ 良い


●『地上最強の商人』/オグ・マンディーノ著/無能唱元訳/日本経営合理化協会出版局(7月16日読了)
☆☆☆ ふつう

 価格が1万円を超える本で、予約をしたら北海道立図書館から手配されて来た。
 以下は特に印象に残った所。
 (p.34)
 ハフィドは、じっと黙って聞いていた。パトロスは言葉をつづけた。
 「まずはじめに、お前は、商人のつらい生活に耐えられることを、私に証明して見せねばならない。いや、私より前に、まず自分自身に証明して見せねばならんのだ。商人の道はけっして容易なものじゃないぞ。確かに、お前も私が言うのを何回も聞いているだろうが、商売の儲けは莫大なものだ。しかし、それも成功したらの話だ。そして、成功する者は、きわめて少ない。多くの者は、大きな富を手に入れる条件をすでに備えているのに、小さな失敗にがっかりして、成功を目前にして挫折してしまうのだ。
 また、ある者は行く手にある障害があらわれると、それは実は自分自身を成長させてくれるものであるのに気づかず、それを敵としてのみ恐れてしまうのだ。それらの障害は、商売の秘訣を学ぶためには必要であり、勝利の神は多くの苦闘と無数の敗北のあとにのみ訪れる。それらの苦闘は、お前を磨き、そして強くする。勇気を与え、苦難に耐える力と、能力を生みだし、自信をつけさすのだ。つまり、障害とは、お前を強化してくれる同志なのだ。もし、そう思えぬなら、はじめからそんな野心をもつのはやめてしまえ。
 運命からの拒絶にあったら、それは自分の未来を拓【ひら】く絶好のチャンスだと思え。そこから逃げたり、避けるようなら、それは、最後の勝利をみずから投げすてるようなものだ」
 ハフィドはうなずき、何か話しだそうとしたが、パトロスは片手をあげてそれを制し、話をつづけた。
 「それだけではない。お前は、世界でもっとも孤独な職業の海に船出をしようとしているのだ。あの、人々からもっとも嫌われている税金徴収の役人でさえ、陽が暮れれば家に帰れる。ローマ軍団にさえ、夜は泊まれる兵舎がある。しかし、お前は、愛する家族や友人から離れて、来る日も来る日も日没を一人で迎えねばならぬ。日暮れに、他の家の家族の夕食の様子を窓越しに見るとき、お前の心は孤独の思いにしめつけられよう」
 パトロスは、なお話をつづけた。
 「この孤独の思いこそ、お前を逃避と挫折へ誘いこむ誘惑の罠なのだ。お前は、この誘惑と直面し、これを克服できるかどうかが、勝負の分かれ目になってくる。家畜とともに、ただ一人で長旅をしていると、一種名状しがたい、それはやりきれない気持ちに襲われることがある。こんなとき、しばしば今やっている仕事の価値も、将来の展望も忘れてしまい、まるで子供のように、一切を投げだしてしまいたくなるものだ。こうして、多くの才能ある若者が挫折してしまう。商売を成功させ、輝かしい未来を勝ちとるのは、誰でもない、己れ自身を克服しえるお前自身でしかないのだ。商売の道で、他人からの愛や慰めを期待してはならぬ。そんな甘えた気持ちで、他人に友情を求めれば、せいぜい、こそ泥に財布をかっぱらわれるのがオチだ」

 (中略)
 パトロスは、彼の肩に優しく手をおいて言った。
 「もし、うまくいかなくても、あまり落胆するな。お前のラクダの仕事はあけておく。お前が商人にむいていないとしても、それはけっして恥ずべきことではない。また、何かに失敗することもそうだ。この世には、失敗の経験がない者などいない。もし、いるとすれば、それは、あらかじめ何もしない者だ。お前が帰ってきたら、お前の体験したことをできるだけ詳しく聞かせてくれ。そのうえで、お前の夢が実現するには、どうしたらいいか考えてみることにしよう」


●『21世紀の教育と人間を語る』/池田大作著/第三文明社(7月22日読了)
☆☆☆☆ 良い

 以下は特に印象に残ったところ。
p.133
松田 今の子どもたちは、遊びの経験が少ないからでしょうか、手のつき方も知らない。 転んでも手をつけないで、鼻や顎【あご】をけがしてしまう場合もありますし、また、ボールがあたっても、突き指ではすまなくて、すぐ骨折してしまう。
若井 骨折などは、食生活の影響も大きいですね。
 今は、どうしてもインスタント志向ですし、カルシウムの摂取が少ない。炭酸飲料ばかり飲む。栄養のバランスが目茶苦茶【めちゃくちゃ】です。
 教育部の先輩は、お母さんの手作りの料理が一番。それには、何よりビタミン“I”(愛)がいっぱい入っている、と(笑い)。
松田 最近は、“おふくろ”の味がなくなって、レトルト食品やスナック菓子など“袋”の味になってしまった(笑い)。
 それで、なくなってしまった“お”の字がどこへ行ったか探してみたら、“しつけ”の上にくっついて“おしつけ”になっていた、という話まであります(笑い)。

p.156
若井 語学は、努力しだいで身についてきますか。才能によるところが、大きいとも言われますが。
松田 よく落語でありますよね。「アメリカ人は頭いいね」「なんでや」「子どもでも英語を話せるというやんか」と(笑い)。つまり、母国語は、だれでも話せるわけですから、会話をするという意味での語学は、才能は関係ないと思います。

p.166
池田 (中略)文豪ユゴーも言っています。「今日の問題は何であるか。戦ふことである。明日の問題は何であるか。勝つことである」と。
 すべての人に、その人でなければできない使命が必ずある。それを自覚できた時、可能性の芽は、無眼に伸びていけるのです。
 それも、社会のため、友のため、後輩のために学び、戦う。人間として、これほどに崇高な生き方はないでしょう。

p.171
池田 教師はまず、自分が学ばなければならない。ただ、教師も現在の英語教育の中で育ってきたわけですから、資格を取ったからといって全員が自在に英語を話せるというわけにはいかない。
 ゆえに、自己研鑽です。技術を磨かない教師に教えられる生徒は、不幸です。「どんな劣等性も優等生にしてみせる」という意気込みと技術がなければ、教師とは言えない。
 また、いまだに国際化時代にふさわしい語学の教授法が確立されていないことも問題です。これでは、いい教師を育てることはできないし、いい教育ができなければ、語学に堪能な世界市民が育っていくはずがない。


●『青年期の心 〜精神医学からみた若者』/福島章著/講談社現代新書(8月10日読了)
☆☆☆☆ 良い

 以下は特に印象に残ったところ。
 p.99
 多くの人が指摘するように、このような暴力が発生する背景には、父権の喪失とか、母性の肥大による過保護とか、世代間境界の喪失といった状況がかかわっているのであろう。したがって、この現象は、登校拒否と同じように現代的な現象であり、現代の青年期が生み出した巣立ちの病である。すなわち、自立へのあがきと見ることができる。実際、登校拒否と家庭内暴力は同じ青年に合併することが少なくない。
 若者のほんとうの気持ちは、年齢相当に、ソトの世界に飛び立って活躍したいと思う。しかし、甘えが強く、あまりにも過保護に育てられた彼らには、その勇気やエネルギーにとぼしい。そこで彼らは、そのいらだちを、とりあえず目の前にいる対象である親に向け、八つ当たりのように、意味のない暴力をふるうのである。

 p.112
コミットメント
 しかし、ここで大切なことは、親友を持つということが、大勢の仲間の中からほかならぬその友人というたった一人を選択し、その人に深くかかわるということである。大きなコミットメント(かかわり、投企、comittment)であると考えられることである。これからもさまざまな角度から見てゆくとおり、青年期の重要な課題のひとつとして、コミットメントという主題が通奏低音のように流れているのだが、親友を選ぶということも、その最初の実験である。
 もちろん、コミットメントは親友の選択だけではない。青年たちは、自分の思想や信条や信仰をみずから選びとり、それに没頭することがある。また、進路や職業を選択し、その目的のために一生懸命努力する。医学に志した青年は多忙な医学生時代を送るし、音楽を志したものは、練習に生活のほとんどの時間をささげ、そのほかの楽しみを犠牲にする。これが、選択とコミットメントの結果である。さらに青年後期になれば、特定の異性を選んで恋愛関係にはいり、ほかの異性との関係と区別する。さらに、青年期の最後には一人の配偶者を選んで結婚する。これらの行為の一つ一つは、すべて青年のコミットメントといえるのである。
 青年は、はじめほとんど無限の可能性を持っている。しかし、可能性を現実としていく過程で、青年たちは無限の中から有限のものを選択しなければならない。選択することは、多くのものから少ないものを、あるいはたった一つのものに限定することであり、その他のものを捨てることでもある。青年期とは、無限の可能性から、自らの有限性を選びとる時代である。その過程がコミットメントであるといえる。


●『基礎からわかる 勉強の技術』/L・ロン ハバード原作/ニュー・エラ・パブリケーションズ・ジャパン(8月12日読了)
☆☆☆ ふつう


●『わが子を算数大好きに変える本』/小宮山博仁著/ごま書房(8月12日読了)
☆☆☆ ふつう


●『上手な叱り方 が面白いほど身につく本』/見山敏著/中経出版(8月12日読了)
☆☆☆☆ 良い

 以下は特に印象に残ったところ。
 p.32
 「部下は上司を三日で見抜き、上司は部下を見抜くのに三年かかる」
 といわれます。上司が部下を見ている以上に、部下は上司を見ているものです。
 あなたは部下から尊敬されていますか?
 人は好感をもつ人の話ならよく聞くものです。逆に、好感をもたない人、嫌いな人の話は、相手がどんなに正しいことをいっても聞こうとしません。つまり、同じように叱られても、尊敬するAさんにいわれたのと、そうではないBさんにいわれたのとでは、受け止め方がまったく違うわけです。
 その意味で、叱るというのは、決してテクニックだけではないといえます。

 p.50
 一回叱って、部下の行動が改善されるとは限りません。たいてい、改善されるまでに時間がかかるものです。叱ってもいっこうに効き目がないときは、
 「自分は上司として認められていないのではないだろうか」
 「きっと、なめられているにちがいない」
 と、自己嫌悪に陥ったり、どうしようもなく相手に腹が立ってしまうことがあるかもしれません。しかし、相手が思い通りに動かないことに対して、いちいちガッカリしたり、腹を立てていたのでは、身がもちません。
 10回いってはじめて10割伝わるのだと、はなから思っていたほうがよいでしょう。
 この姿勢で臨んでみると、腹も立ちません。何度も何度も、耳にたこができるほど気長に繰り返すつもりでいることです。

 叱る効果は、その真剣さと繰り返しによって決まります。
 指示・命令がうまく行き届かないのは、発信する自分に情熱が足りないのではないか、と自省してみてください。
 叱っても効果があらわれない場合には、心を鬼にして情熱を込めて繰り返し叱ることです。そうすれば部下は、「この人は本気なんだな!」と思いはじめます。
 とくに、新しくリーダーになったときこそ、勝負なのです。最初は部下も、お手並み拝見なんて軽い気持ちで叱責を聞き流しているかもしれません。それを放置しておいたら、上司の権威は失墜します。
 どうしても効き目がないときは、叱る強度を変えていくのもコツです。理屈で叱り、だめなら感情を込めて叱り、どうしてもというときには腹の底から叱るのです。
 大事なことは、絶対にあきらめないということです。


●『池田大作全集第27巻 撰時抄講義』/池田大作著/聖教新聞社(8月19日読了)
☆☆☆☆ 良い


●『鈍感力』/渡辺淳一著/集英社(9月2日読了)
☆☆☆☆ 良い


●『ホントに勝てる四間飛車』/先崎学著/河出書房新社(9月21日読了)
☆☆☆ ふつう


●『御義口伝講義 下(三)』/池田大作著/聖教文庫(10月29日読了)
☆☆☆☆ 良い


●『財政学』/宮島洋・井堀利宏共著/放送大学教材(11月29日読了)
☆☆☆☆ 良い


●『池田大作 行動と軌跡』/前原政之著/中央公論新社(12月15日読了)
☆☆☆ ふつう


(本年32冊/通算360冊)



 [前のページ   [次のページ


 読書感想(書庫)の目次へ戻る