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1999年(H.11年) 平成20年4月3更新
☆☆☆☆☆ 大変良い アメリカ近代の農民たちの、東部から西部への大移動を、ジョン・フォード一家の姿を通して描いている。庶民の苦しみ、悲哀、それらをつきぬける雑草の如きたくましさ、「如蓮華在水」とも言うべき清らかさと純朴さ、強さが丹念に描かれている。まだ、上巻のみであるが、アメリカ文学の名作の半分を、味わい深く読了することができた。 ●『赤ひげ診療譚』 山本周五郎/新潮文庫 (99年2月12日読了) ☆☆☆☆☆ 大変良い 偏屈とも言えそうな、小石川療養所の院長、新出去定【にいできょじょう】を、初めこそ嫌っていた登【のぼる】が、最後は藩の御目見医【おめみえい】の席をけってまで、去定を師と定め、療養所の医師として生きてゆこうとする決意に立つまでの、内面と振る舞いの変化が面白い。貧しさゆえに醜悪この上ない姿をさらけ出す患者の身内がいるかと思えば、逆に、極貧であっても、人間としての輝きを放つ庶民の姿もある。病人の治療を通して明かされる、人間の深淵のような有様が、数多く盛り込まれていくなかで、主人公の人間的成長が描かれている。 ●『よくわかる精神医学 第1巻 精神病編』 野原一夫著/ナカニシヤ出版 (〜第1章のみ 99年2月24日読了) ☆☆☆ ふつう ●『小説家になるには』 野原一夫著/ぺりかん社 (99年3月6日読了) ☆☆☆☆ 良い ●『ドクター・オボのこころの体操』 於保哲外著/素朴社 (99年3月9日読了) ☆☆☆☆ 良い ●『世に棲む日日(一)』 司馬遼太郎著/文春文庫 (99年3月10日読了) ☆☆☆ ふつう ●『青春の蹉跌』 石川達三著/新潮社 (99年4月18日読了) ☆☆☆☆ 良い 主人公、江藤賢一郎は、某私立大学の法学部の学生。司法試験を、一発で合格していく程の明晰【めいせき】な頭脳を持つ。寡婦【かふ】である母親との二人暮らしで、学費は実業家の伯父からもらっている。その伯父の次女、康子との縁談も、司法試験合格を機に結実していく。しかし、彼には大橋登美子という愛人がいる。 この物語には、エゴイズム、エゴイストという言葉が少なくとも20回近く出てきた。主人公江藤が名誉栄達のためには、自分との子を宿した登美子を殺すに至る。一族から法学博士を出し、娘と結婚させようと打算する伯父。初めは金の力を背景に高慢な態度が強いが、江藤の司法試験合格とともに手のひらを返したように歩み寄る康子。作者の辛辣【しんらつ】な表現をそのまま借りれば、女としての繁殖の本能のままに、江藤に子を産むことの承認と、結婚を迫る登美子。それらの全てをそれぞれのエゴイズムとして見、現実主義に生きようと割り切って、自らの栄達のために利用しようとする賢一郎。崇高な人間の生きざまも火事に焼け出された夫婦の姿として、一つだけ見られるが、それさえも、この小説では、エゴイストとしての現代人の醜悪さを引き立てる役割をしているにすぎない。 登美子を殺した殺人犯として、刑事に取り調べを受ける賢一郎の姿が最後に描かれる。いくつかのアリバイ工作もした。法律の知識は、相手の刑事より何十倍もあるのだと、この期に及んでも自負しそれにすがっている。しかし、「大人」であり、老練な刑事に対しては、それらはほとんど何の役にも立たず、刑事から明かされた最後の一言に、愕然【がくぜん】とする賢一郎。 法律知識以外には全く無知で、現実主義者としての生き方に徹しながら、反対に現実に翻弄【ほんろう】され、殺人を犯すまでに至る。物語として、作者の心象を思いやるにつけ、殺伐とした風景だけが拡がっている。だが、現代人の抱える病理を描ききろうとする、その設定と、展開、結末や、妥協と容赦のない筆致【ひっち】は、一種痛快といってよいほどの冴えを見せる。苦しい体調とともに精神的にも苦しみつつ読んだが、これからの自分の人生航路に、反面教師としての貴重な示唆を与えてくれた一書であった。 ●『我が人生・文学・出会い―ユゴーと「人間革命」―』 辻昶著/聖教新聞社 文化教養シリーズ27 (99年5月4日読了) ☆☆☆☆ 良い ●『池田大作全集26 「立正安国論」講義[下]』 聖教新聞社 (99年5月12日読了) ☆☆☆☆☆ 大変良い ●『御義口伝講義 上(三)』 池田大作著/聖教文庫 (99年5月16日読了) ☆☆☆☆ 良い ●『営業マンのビジネス・マナー』 内藤和美編/経営実務 (99年5月16日読了) ☆☆☆ ふつう ●『エヴゲーニイ・オネーギン/大尉の娘 他』 プーシキン著,木村浩訳/集英社 世界文学全集10巻所収の「エヴゲーニイ・オネーギン」のみ (99年5月24日読了) ☆☆☆ ふつう (以下5月19日記) 「ロシア文学の父とも母とも」呼ばれるプーシキンがいなければ、あのトルストイもドストエフスキーも存在しなかったろう。その割には、日本では、トルストイ等を読破しているような人も、プーシキンについては素通りしているようだ。 以上は、同書の解説に書かれていた部分を要約したもの。 久々に、「心の栄養」を摂取した感強し。自分を投影できる主人公に出会えたことが、その効果をもたらした原因の多くを占めているようだ。 ただし、主人公オネーギンもその親友も、二人とも地主である。「持たざる者」である自分を、彼らに二重写しにすることは、ますます現実の生活を軽視させるという危険をはらんではいまいか。 止そう止そう。精神の世界へ、日記という世界へ(今日だけでも)、現実の苦しみと不安を持ち込むまい。「気休め」も時には必要だ。ただし、一つは、100%完全に、気が休まる対象でなくてはならない。二つ目は、「気休め」というのも悪意のこもった言葉に過ぎず、人間の多くは「生きる」ために、「気休め」を上手にできれば、それは大いに有用なものであるまいか。 それにしても、プーシキン。まだ数十ページを読んだに過ぎないが、作者の両腕に抱かれて、プーシキンの世界に入ってみると、今の自分を軽々と受け入れて余りある。プーシキンという作家と世界の「ふところ」の広さを感じている。いささかほめすぎだろうか。 (以下5月25日記) プーシキンの『エヴゲーニイ・オネーギン』を読了した。ユニークな作品ではあった。 話の筋としては、オネーギンと、ヒロイン、タチヤーナとの恋のすれ違いを描いたものに過ぎなかったが、それなりに楽しく読んだ。 プーシキンの年譜を見ると、26歳から34歳にかけてこの作品を執筆している。プーシキンは決闘で銃弾を受け、38歳の若さで死亡している。 まだ一編だけであるが、プーシキンの世界を垣間見た。 ●『女の歓ばせ方』 森田浩一郎著/ごま書房 (99年5月26日読了) ☆☆☆ ふつう ●『詩集 草の葉』 W・ホイットマン著,富田砕花訳/第三文明社・レグルス文庫 (99年7月31日読了) ☆☆☆ ふつう ●『世に棲む日日(二)』 司馬遼太郎著/文春文庫 (99年8月5日読了) ☆☆☆ ふつう ●『勝海舟(一)』 子母沢寛/新潮文庫 (99年8月11日読了) ☆☆☆ ふつう ●『ファウスト(二)』 ゲーテ著/新潮文庫 (99年8月22日読了) ☆☆☆☆☆ 大変良い (以下’98年10月4日記) 今、「ファウスト」の第二巻を、新潮文庫版で88ページまで読み進んだ。十年位前に、この巻の最初でつまずき、何が何やらちんぷんかんぷんだったことに比べると、かなり明瞭に情景を思い描きながら読み進むことが出来るようになった。 努力はうそをつかないものであると痛感した。この十年で読書力と、人間としての足腰の鍛錬と成熟が、思ったことのないほど進んでいた。 ここまでの粗筋は次の通り。 主として、宮廷の享楽と退廃の有様を舞台に、人間の貪欲を様々にアレゴリー(比喩)を駆使して登場させ、あるいは国家、皇帝、高官、道化、詩人などの人物が、それぞれの得失を暴露していく。この世のあらゆる存在を風刺し、風刺しようとするその態度をも風刺することを忘れていない。 主人公のファウストは富の神という役で、メフィーストフェレスは道化役として舞台に登場している。以上、読みの浅さがあるやも知れぬが、話の筋の記録としてはよかろう。 ところで、このファウストを久し振りにひもといた理由は、あのゲーテがライフワークとして60年の歳月をかけ、五人の子どもと妻を失った苦悩を経ながら完成していった、という池田先生のスピーチ(’99.9.25付聖教)を読んでのことである。 文豪ゲーテの60年の結晶というからには、これはまた登りがいのある高峰ではないか。 ●『図解・会社のしくみがわかる本』 生方幸夫著/三笠書房 知的生きかた文庫 (99年9月1日読了) ☆☆☆☆ 良い ●『プロが教える 転職で成功する33のマニュアル』 坂川 山輝夫/成美堂出版(99年9月7日読了) ☆☆☆ ふつう ●『超管理職 〜「師匠」と呼ばれる上司の法則集』 中谷彰宏著/PHP文庫 (99年9月26日読了) ☆☆☆ ふつう (本年20冊/通算246冊) [前のページ] [次のページ] [読書感想(書庫)の目次へ戻る] |